111111令和4年8月10日、全国高校野球選手権大会1回戦 聖望学園-能代松陽、聖望学園2-0で迎えた4回無死一塁、打者がカウント2-2からバント、小フライとなって投手の前に飛び、投手が意図的にワンバウンドで捕球し一塁に送球。聖望学園一塁走者はスタートを切っておらず、一塁上でストップしたまま。ベースを踏んでから、一塁走者にタッチしたため併殺は取れず1死一塁に。その後、球審が審判を集めて話し合いマイクで場内に説明、「打者がバントしました。投手はワンバウンドで捕球し、一塁へ送球。打者走者、フォースプレーでアウト。その後、一塁手が一塁走者にタッチしましたが、ベースを踏んでいましたので、一塁走者はセーフ。1アウト一塁で再開します」。<日刊スポーツ評論家 田村藤夫氏(62)解説> 8月10日の1回戦、聖望学園-能代松陽。聖望学園の攻撃は4回裏無死一塁。打者の送りバントは投手前への小フライとなった。投手はダイレクトで捕球できたが、機転を利かせワンバウンドで捕球。そのまま一塁に送球。一塁手は一塁ベースを踏んで送球を受ける。塁審はアウトをコール。この時、一塁走者は一塁ベースにとどまっていた。続けて一塁手が一塁走者にタッチしたが、塁審はセーフのジェスチャー。一塁手は困惑した様子を浮かべるが、状況は変わらなかった。ワンバウンドで捕球した瞬間にフォースプレーとなり、一塁走者は二塁に進まなければならない。もしかすると一塁手はそう判断したから一塁走者にタッチした可能性があるが、アウトにはならなかった。ちょっと戸惑うファンの方もいるのではないだろうか。大切なポイントがある。まず、ワンバウンド捕球した投手がすぐに二塁に送球していれば、二塁でフォースアウトだった。小フライになったため一塁走者はダイレクト捕球に備えて帰塁した。二塁に送球していればアウトになる確率は高く、そこから一塁に転送すれば併殺になる。だが、小フライだったため、打者走者が一塁でセーフになる可能性もあった。そこで、投手は一塁に先に投げたのだと見た。一塁手がベースを踏んだままで送球を受けるか、ベースから離れて送球を受けるかで状況は一変する。ベースを踏んで送球を受けた時点で、打者走者はアウトになるが、一塁走者のフォースプレーは消える。一塁走者をアウトにするにはタッチプレーが必要になる。しかし、一塁走者は塁上にいたため、タッチしてもアウトにならない。整理すると、投手がワンバウンド捕球した時、一塁走者が走っていなければ、まず二塁に投げてから一塁転送の併殺を目指す。または、投手が一塁に投げ、一塁手は一塁ベースから離れて捕球する。一塁走者はフォースプレーになるので塁上にいてもタッチすればアウト、次に一塁ベースを踏めば併殺成立となる。一塁走者はワンバウンド捕球を確認し、一塁手がベースを踏んだまま送球を受ける確信があり離塁しなかったのなら、一塁走者の判断力が勝っていた。きちんと整理して考えればわかるが、これを瞬時に判断して動けるかどうかは、日ごろから状況を設定して反復練習しておくこと。そして、分かっていても常に内野手同士で確認の声をかけあうことがとても大切になる