8a6c45c4(企画構成/株式会社スリーライト)スポーツナビユーザーの投票による「好きな地方球場ランキングトップ10」を発表! 今回は、1990年から2021年にかけて全国1025球場を行脚、2017年に『全国野球場巡り877カ所観戦訪問記』(現代書館)を刊行した斉藤振一郎氏が、実体験を交えながら各球場の魅力を語ります。位:坊っちゃんスタジアム(愛媛県)位:倉敷マスカットスタジアム(岡山県)位:北九州市民球場(福岡県)位:沖縄セルラースタジアム那覇(沖縄県)位:埼玉県営大宮公園野球場(埼玉県)位:静岡草薙球場(静岡県)位:サンマリンスタジアム宮崎(宮崎県)位:長良川球場(岐阜県)位:藤崎台球場(熊本県)10位:平塚球場(神奈川県)地方球場編の位は愛媛県松山市の坊っちゃんスタジアム。「美しい」「解放感がある」といった声が多数。「ヤクルトが試合をするから」という方も多く、近年のヤクルト戦開催恒例化が球場の人気を生み出しているようです。私が印象に残っているのは、併設されている「の・ボールミュージアム」。プロ・アマ関係とも展示物がやたら豪華な歴史資料館です。野球ファン必見でしょう。「坊っちゃん」とはインパクト十分のネーミングですが、隣にあるサブ球場は「マドンナスタジアム」。「坊っちゃん」に「マドンナ」とは、なんと絶妙なセンスと感心していましたが、松山の方によると「坊っちゃん団子」「マドンナ団子」という商品があるように、ペア的なものにこう名付けるのは松山ではよくあるとか。NPB球団の本拠地としても通用しそうな堂々たる球場で、水島新司さんの漫画では四国球団のフランチャイズとして描かれています。「ドカベン・山田太郎の打席連続敬遠」とか「札幌にドーム球場ができてプロ球団が誕生する」とか『水島予言』はとかく的中、後年現実化します。ですので、いつの日か松山に本拠地を置く球団が誕生するのかもしれません。位の倉敷マスカットスタジアムはJR山陽本線の車窓から見えるので親しみを感じる方が多いのかも。「内野の黒土が美しい」と称賛する声が多かったです。土地柄のせいかデザインに気品を感じる球場です。岡山県福田町(現在は倉敷市と合併)出身の星野仙一さんが監督になってからは、東北楽天の秋季キャンプでも使われるようになりました。星野さんの郷土愛を感じます。位の北九州市民球場については「福岡PayPayドームにはこの球場のあの味は出せない」というご意見がありハッとさせられました。たしかにデラックスな球場がそろう現代では珍しくなった「昭和」の匂いが残っています。今は無き川崎球場や日生球場のようなレトロな雰囲気……。貴重な存在といえましょう。位は「球場周りに花や緑がいっぱい」「オリオンビールが浴びるほど飲める」のご意見があった沖縄セルラースタジアム那覇。私は建て直される前の奥武山球場にも行っています。県初の野球場として1060年に造られた古い球場で南国ムード漂う建築でした。現在の球場もどこかに沖縄らしさを盛り込んだデザインにしてほしかったと思ってしまうのはワガママでしょうか。「くにがみ球場(沖縄県国頭村)みたいに玄関にシーサーを据えてくれ!」とまでは言いませんが……。私は沖縄文化の大ファンなので。そんな私としては、この球場に併設された沖縄野球資料館の展示には感じさせられるものがありました。素朴としか見えない古い野球用具を眺めていると、沖縄の人々がいかに野球を愛し、また野球がどんなに人々の支えになってきたかが伝わってくるのです。他に展示室が充実しているといえばヨーク開成山スタジアム(福島県郡山市)です。中畑清さん(元巨人、市内の高校出身)の小学生時代の通知表まで公開されています。黒部市宮野公園野球場(富山県)のスタンド下に、甲子園球場から譲り受けたという昔のスコアボードで使われていた選手名表示板が展示されているのを見た時は、甲子園を身近に感じることができるナイスアイデアと思いました。位、埼玉県営大宮公園野球場は売店のおにぎりや、キュウリの漬け物が美味しいです。観察しているとおにぎりはその場で握っている様子。価格が100円台なのもうれしいです。これに対抗できる地方球場内売店グルメとしてはやはり、レグザムスタジアム(香川県高松市)の讃岐うどんでしょう。位、静岡草薙球場の見どころは、球場前の沢村栄治さんとベーブルースが対決している銅像でしょう。1934年の日米野球、この球場で演じた快投の再現です。野球場にはしばしばこうした銅像が設置されています。変わり種としては大和スタジアム(神奈川県大和市)に山田太郎、里中智(水島新司さんの漫画『ドカベン』の人気キャラクター)の銅像があります。銅像といえばこんな思い出があります。旭川スタルヒン球場(北海道旭川市)の前にスタルヒン投手が振りかぶっている姿を象った銅像が建っています。眺めていたら、お爺さんに声をかけられました。お爺さん「あんたどこから来たの?」私「東京です。全国の野球場を周っているんです」お爺さん「じゃあ函館オーシャンスタジアムって知ってる?」私「先日行きました。久慈次郎さんの銅像があるとこですよね」久慈次郎氏とは大正・昭和初期にアマチュア球界で活躍した名捕手で、函館の球場に捕手姿の銅像が建っています。お爺さん「その久慈の像とこのスタルヒン像は向き合うように建てられているんだ。二人は全日本で一緒にやったこともある。永遠のバッテリーだな」ニコニコしているお爺さん。旭川と函館を隔ててバッテリーを組ませるとは、なんとスケールのデカい、なんというロマン。北海道の方はイキですね。野球旅をしているとこういう素敵な話に出会うこともあるのです。位にランクされた、ひなたサンマリンスタジアム宮崎は観客席が大きく、内野にも芝生が敷かれたリッチな球場です。サンマリンというネーミングは公募の末決められましたが、一般の人々に交じり長嶋茂雄さんも「サンマリン」で応募。命名者の一人と認定されています。ネーミングライツ契約が盛んになる前は球場にカッコイイ名前を付けるのが流行っていました。しまなみ球場(広島県尾道市)とかアルペンスタジアム(富山県富山市)などはキマっていますね。奇抜なのは「北緯40度球場」(岩手県普代村)でしょうか。位、リブワーク藤崎台球場の名物は外野席場外に並び立つ巨大なクスノキ群です。大きいものは樹齢1000年を超え、中には観客席を越え外野フィールド・フェア地域上空にまで枝を伸ばしているものもあります。普通ならプレーの支障になるとして伐採されるところですが、なにしろ国の天然記念物とあって伐ることができません。やむを得ず「枝の中に飛球が入りこんだら認定ホームランとする」という特別ルールを設定しています。これなどはプロの本拠地球場では絶対にあり得ない「ザ・地方球場」な逸話でしょう。11位(得票率0.99%)で惜しくもトップテンに入らなかったのは、2021年、東京五輪・野球競技の開幕戦で侍ジャパンの劇的な逆転サヨナラ勝ちの舞台となり「ゲンの良い球場」として全国に認知された福島県営あづま球場。印象に残っているのは、横に長〜いスコアボードです。左から、三塁側チーム打順、審判員名、HEFC灯とSBO灯、得点板、前試合結果、一塁側チーム打順が一列にズラ〜っと並んでいます。幅50メートルはありそう。こういうデザインのスコアボードは全国でもここだけではないでしょうか(おそらく西武ライオンズ球場開設当時のスコアボードを参考に設計されたと推測しています)。近年は味のある個性的なスコアボードに出会うことが少なくなりましたが、2019年に訪れた盛岡市営球場のスコアボードが非常に旧式で、昨今では珍しい発見でした。しかし同球場は、老朽化のため廃止が検討中。昭和文化大好きな私としては、こういうスコアボードこそ貴重な文化財として永久保存してほしいと願っているのですが。今回の投票でみなさんの「好きな理由」コメントを見ていると「天然芝だから」「野外球場だから」「グラウンドが広いから」などが目立ち「本物志向」の高まりを感じます。そんな中で来年登場する、新庄剛志ビッグボスも太鼓判の「北海道日本ハムの新球場」はどんなスタジアムなのか。楽しみで仕方ありません。