shushouhttp://www.asahi.com/koshien/articles/ASL2P6T12L2PUBUB018.html 秋田市で生まれ育ち、主に野球の記事を書くフリーライターをしています。雑誌などでは 「ヨシネー」 と呼ばれています。出版社に勤めていた頃を含め、高校野球の取材に携わったのは20年以上。数えたら、甲子園に春18回、夏は23回も行っているんですね。忘れられない取材があります。西目高校の主将だった佐藤秀樹さん。十数年前、進学した亜細亜大の野球部の練習中に亡くなりました。心臓が強くなかったのです。実は、私は会ったことがありません。彼は野球推薦ではなく、一般入学でした。普通なら入部できない。それでも必死に入部を訴え、練習生として体を動かしていたさなかの事故でした。その話を聞き、「秋田にこんな思いの強い子がいたんだ」 と衝撃を受けました。同学年の選手や監督が、にかほ市に住む佐藤さんのご両親を訪れるなど、今でも交流が続いています。短い付き合いだったにもかかわらず、みんな彼の思い出を大事にしているんですね。佐藤さんの使ったミットは、今でも亜大野球部の監督室の、グラウンドを一番よく見渡せる所に置かれているそうです。長い間見てきて、一つ思うんです。それは 「高校野球も球児も、全然変わらないな」 ということ。感情をあらわにすることが少なくなったように見える現代っ子が、坊主頭で泥んこになってプレーしたり、負けてビービー泣いたり。時代錯誤って言われるかもしれないけど、甲子園の現場に行くと、それが普通なんですね。果たして自分はあそこまで熱くなれるのか、と考えます。球児は、私たちが忘れがちな「何か」を持っている。こちらは大人なのに、彼らを取材することで我に返ることがある。「夢をかなえる」って言葉を鼻で笑っていないだろうか。彼らの真剣なまなざしを見ると思います。さあ、いよいよ100回目の夏を迎えます。甲子園で秋田代表を取材する時はホッとします。いつも秋田弁で話しかけています。幼い頃は阪神ファンでした。でも、甲子園に一番似合うのは高校野球だと思います。泥だらけになる土があり、美しい天然芝がある。高校野球と球児、それに甲子園がこれからも変わらないでいてほしいです。(聞き手・山田佳毅)