kumagai<朝日新聞> 文武両道、球児育て26年 育成功労賞の熊谷さん。日本高校野球連盟と朝日新聞社は、高校野球の発展と選手の育成に尽くした指導者を表彰する 「育成功労賞」 に、秋田南(秋田市)野球部元監督の熊谷隆益(たかえき)さん(65)を選んだ。監督として25年間、責任教師として1年間、「文武両道」 を掲げて指導にあたった。高校時代は、秋田南の投手。「当時は野球だけやっていて、何も考えていなかった」 と話す。最後の夏は、準決勝で敗退した。恩師の影響で高校教師を目指そうと、そこから勉学に励んだ。「監督として、甲子園を目指したかった」 非常勤などを経て、1975年から横手(横手市)に赴任し、野球部監督としての道を歩み始めた。同校は、甲子園出場経験もある文武両道の伝統校だ。「勉強もしながら、強くならないといけない」 と考えさせられたという。勉強の時間を確保するため、練習は遅くても午後7時で切り上げた。ただし、グラウンドに入ったら全力で練習に取り組むようにと、強く求めた。「文武両道」の根底には、「純粋に野球が好きな子どもたちなので、野球が将来の糧になれば」という願いがある。野球の技術を謙虚に学ぶこと。自分なりに考えて練習すること。気付きを積極的にプレーに生かすこと。社会人の基本にもなる「謙虚に学ぶ姿勢」「常に考える習慣」「積極果敢な行動」を、野球を通じて身につけてほしいと考えている。教え子たちは、医者やアナウンサー、学者など、各界で活躍している。「怖かった」と言われることが多く、「もう少し余裕を持ってやっていればとか、反省の方が多いです」 と笑う。それだけ真剣に向き合ってきた。「教え子たちが、『あいつが監督だった』と胸を張って言える人間でありたいと、死ぬまで責任を感じる」横 手での8年間の勤務の後、由利工を経て、最後は母校・秋田南でも監督を務めたが、準決勝での3回の敗退が最高成績。目標だった、甲子園の土は踏めなかった。でも、思う。「生まれ変わっても、監督をやりたい」 表彰式は7月12日、こまちスタジアム(秋田市)である第98回全国高校野球選手権秋田大会の開会式に先立って行われる。(石川春菜)